Column / News Letter



Webマーケティングトレンド通信Vol.1 2012年7月号

モバイル解析の課題と克服方法について

はじめに
まず、米国Stratigentoによる241名のマーケターに対する最近のモバイル(スマートフォン含む)マーケティング調査結果をご紹介します。 「モバイル解析で実施していること」について、47%が「基本的なトラッキング、 トップラインの解析だけ」と回答しています。 また、モバイル解析で実施できることが望ましいレベルに引き上げるにはまだ課題が山積しているにも関わらず、 51%のマーケターが2012年のモバイルマーケティング活動を活発化させると回答しています。

この調査結果で回答者から得られた課題の上位3つは以下の通りです。

1位 リソースと専門的知識不足
2位 モバイル戦略がない
3位 複数のデータソースを統合して解析することが困難

また、参考までに「予算不足」については8位でした。

以下に、リソース、経験、戦略や統合された分析の課題を克服するためのヒントをご紹介します。

課題#1 モバイル戦略がない

この課題を克服するには、 「モバイルプラットフォーム戦略」と「モバイル解析戦略」の2つの戦略が必要です。 最も一般的なモバイルプラットフォーム戦略の目的は以下の通りです。

  1. リーチを増やす。
  2. ユーザーの肯定的な反応を引き出し、魅了されるようなユーザーエクスペリエンスを提供する
  3. ユーザーが目的の行動を完了できる、またはコンバージョンできる。

次にモバイル解析戦略について紹介します。モバイル解析戦略には以下の3つの要素があります。

1.組織的導入と戦略的提携
だれがモバイル解析プログラムを支援するのか?全体のビジネスやマーケティング目標をモバイル解析によってどうやって達成するのかを考えます。

2.テクノロジー・インフラ
どんなツールでモバイルサイト、アプリ、広告をトラッキングするか。誰がどのように実装するのか。解析にどんなデータが必要かを考えます。

3.洞察・改善
モバイル戦略が成功したかどうかを判断するためには何を計測する必要があるのか。 これについてどのように組織でコミュニケーションを取るのか。全体の状況を組織に展開するために、どのようにして異なるソースからデータを統合させるか。 モバイル解析戦略は直接的にモバイルプラットフォーム戦略に整合する必要があります。ここでは、皆様の目的が上記の前提と近しいものであるという前提にたってご紹介します。

組織的導入と戦略的調整

「組織的導入」と「戦略的調整」は、計測プログラムを成功させる上でとても重要です。これらは多くのサポートと投資が必要なモバイルプラットフォームの領域を高成長させるために重要です。また、大胆なモバイル戦略策定のために、組織幹部からの支援が必要です。そして、マーケターはモバイルとマルチチャネル全体のゴールと戦略を可視化して把握することが必要です。

組織的導入

モバイルプログラムを組織的に導入させることは、非常に熟練したマーケターにとっても挑戦となります。 組織的に導入できなければ、マーケターはプログラムのための活動に制限が生じることがあります。 例えば予算やサポート、組織内の合意を得られずに途中で挫折してしまうでしょう。 「組織的にプログラムを導入する」ということは、その成果に対する責任を負うということであり、 これによりマーケターはスムーズにトラッキングとスケジュールやリソースの面でプロジェクトを継続して行くことができます。

組織の成果責任の欠如は今日のマーケターの課題となっています。 今回の調査結果で、マーケティング担当者の10%が「モバイルへの取組みに対して組織が成果責任を負っていない」と回答しています。 これは特にモバイル戦略を進めて行くためのリソース確保に対する重要な障害であることを示しています。

複雑かつ新しい取組みに対して責任を負うことは難しいことですが、組織が「成功」を定義することは、「何が問題になっているのか」を議論する際に役立ちます。 では、どのように組織的に導入していけばよいのでしょうか。

最初に、モバイルへの取組みの可能性について精通した役員クラス、いわゆる「シックスシグマ」における「チャンピオン」を見つけることから始めます。 「チャンピオン」の役割は、必要な予算やリソースなどの確保、その他プログラムが直面する課題を取り除くことであり、 プログラムの実施や継続性、成果に対して責任を持ちます。また、組織全体のビジネスゴールや戦略にモバイル戦略を一致させるよう調整します。 マーケターは「チャンピオン」と協調して動きます。

戦略的調整

組織内において、他のメンバーやグループと連携しない「孤立したプログラム」は上手く行きません。 特にモバイルへの取組みは組織的に連携することが大切です。 モバイルへの取組みは、オフラインとオンラインでのブランディングの延長線上にあることが理想的です。 モバイルは顧客との新しいコミュニケーション手段であり、モバイルは常にユーザーが持ち歩いているということなどの特徴を考慮して、分析方法を検討することが重要です。

モバイル戦略とビジネス戦略とを素早く調整し、定期的にその内容を検証します。 プログラムスタート時には、チャンピオンと協調して下記のような質問に対する答えが用意できるようになっておく必要があります。

1.モバイルサイトとモバイルアプリで何をするのか。
モバイルプラットフォームの主な目的は何か。 例えばアプリケーションによって物販するのか、モバイルという新しい手法でユーザーとのコミュニケーションによりブランド認知を創成するのか。

2. いつ「目標を達成」したのかを、どのように知るのか。
モバイルプラットフォームは何を持って「成功」とするか。モバイルアプリの収益目標をどうするか。

3.目標を達成するための分析方法は?
何が目標達成に影響しているのかを判断する手助けとして、モバイル解析で何ができるのか。 パフォーマンスを最大化させるためにどんな戦術を採用し、どのくらい時間を要するのか。

テクノロジー・インフラ

プログラムを組織的に導入できたら、次にモバイルサイトとモバイルアプリ上のユーザーの行動を測定するための「トラッキング戦略」を策定し、実行します。 包括的なトラッキングデザインを作成することはとても難しい場合があります。 調査結果では、わずか16%のマーケターが「イベントトラッキングやユーザートラッキングなどの高度なトラッキングを実装した」と回答しました。

テクノロジーとインフラの観点から、戦略を策定する時の3つの要点を以下にご紹介します。

  • ツール:モバイルプラットフォームと広告の計測に使えるか?
  • トラッキング戦略:意思決定が可能なデータをどうやって取得するか?
  • 実装プロセス:トラッキング戦略をどうやってモバイルサイトやモバイルアプリに実装するか?
ツール

色々なニーズやレベルに合わせた様々なモバイル解析ツールがあります。 多様なモバイルプラットフォームおよび広告戦略があるため、それぞれに合った複数のツールを利用しているのが現状です。 一部の高機能な分析ツールは、モバイルサイトとモバイルアプリケーションを考慮したモバイル端末向けのトラッキング形式を提供しています。 例えば、モバイル端末別の来訪者とPCからの来訪者との行動比較できるような機能を提供しています。

トラッキング戦略

モバイルアプリケーションを計測する必要がある場合、モバイルトラッキングは解析プラットフォームへデータを送信するためのAPIや、特殊なトラッキング技術を必要とします。

モバイルアプリの開発と保守には多くの投資が必要なため、これらを精度高く分析するための解析トラッキングは重要です。 モバイルへの取組みをモニタリングすることは、シナリオ通りにユーザーが行動できているかを把握し、判断する唯一の手段です。

モバイルトラッキング戦略を策定し、継続していくためには以下の3つの要素が必要となります。

1.要件の収集とKPIの開発
モバイルサイトとモバイルアプリの要件の収集とKPIの開発において、モバイルの場合、プロセスは複数のプラットフォームで完了する必要があります。 このため、多くの企業では、モバイル全体のKPIだけでなくプラットフォーム個別のKPIを設計しています。 例えばKPIの1つである「1訪問当たりの収益」などをプラットフォーム別に分析することは、「何が一番効果的なのか」を判断するのに役立ちます。 また、モバイルのコスト削減やプログラムへの貢献度を分析することは、モバイルプログラムの成功のための高い意識を維持して行くのに有効です。 モバイルKPIは組織によって承認されなければなりません。KPIだけでなく、オンライン・オフライン含めた他の指標も考慮に入れましょう。

2. トラッキング戦略策定
モバイルKPIを定義し、トラッキング要件を収集したら、包括的なトラッキング戦略を策定します。 これには基本的な計測コードを実装するための手順を含め、 モバイルサイトやモバイルアプリのインタラクティブな機能やダウンロードといったon-clickトラッキングなどの、より高度なトラッキング機能が含まれます。 サイト戦略を修正する場合やアプリケーションの仕様を変更することがある際は、 使用しているすべてのイベントやカスタム変数に関するソリューション設計書を作成しておくと便利です。

3.機能アップデート
次に、モバイルプラットフォームは常に変化するということを考慮に入れる必要があります。 トラッキング戦略を策定する場合、変化するプラットフォームに対して随時アップデートできるように、ある程度の柔軟性を維持することが必要です。 ドキュメントを整備しておくことで、トラッキング戦略を変更する際にスムーズになります。

ある組織のモバイルプロセスは他の組織にはあてはまらない、という場合が多くあります。 モバイル分析を実施するためのプロセス開発は大切ですが、「何が効果的なのか」に基づいて継続的にプロセスを修正し、 改善して行くことも重要です。これはKPIの見直しを継続的に行うのに有効です。

洞察と改善

生成されたデータを分析することは、モバイル計測戦略の3つ目の重要な要素です。 これはマーケターにとって最大の課題の一つでもあります。データから洞察し、「次に何をするのか」を意思決定することは、 組織が消費者のニーズを満たすべくモバイル・プラットフォームを最適化するために重要な要素となります。

一般的なモバイル解析の導入プロセス・ステップは以下のようになります。

  1. 取り組みの範囲を定め、全体スケジュールを策定する
  2. 関係者へのインタビューを実施し、要件を集約する
  3. KPIを作成し、承認を得る
  4. トラッキングの優先順位をつける
  5. トラッキング戦略を策定する
  6. トラッキング戦略を導入する
  7. テストと調整
  8. 公開
  9. データ収集のチェックとレポートの実施

課題#2 人的リソースとモバイル経験の不足

今回の調査において41%ものマーケターが、「リソースや経験の不足は、モバイルマーケティング活動を計測する際の最大の課題である」と回答しています。 一般的に組織は、そのプログラムの必要性を証明できるまではリソースに投資しません。 このようなリソース配分の課題がある上、モバイル分析では様々なスキルセットが必要になります。 一般的なアナリストは、モバイルアプリケーションの複雑なトラッキング要件を実装するために必要な技術的なスキルを持っておらず、 デベロッパー(開発者)は通常、有意義な提言を行うためのデータ分析の時間も専門知識もないのが一般的です。

そこで、モバイルへの取り組みを計測するのに際して、最低限以下の人材や役割が望まれます。

・インプリメンテーションスペシャリスト
ビジネス要件に基づいてトラッキング戦略の開発を担当。モバイルプログラムのスタート段階では、 インプリメンテーションスペシャリストはPCサイトやマーケティング戦略をトラッキングすることに責任があり、社内の分析ツールに精通している。

・アナリスト
有用かつ豊富なデータを収集し、提案するための分析を行う。 通常、アナリストはPCサイト分析や典型的なマーケティング施策の分析も担当する。 アナリストはデータ分析のベストプラクティスとプロセスの知識を有している。

・デベロッパー
トラッキング戦略を実装するための責任を担当する。 デベロッパーは企業のIT部門のメンバーであり、モバイル案件を制作会社が開発している場合は、制作会社のチームの一員である場合もある。

・チャンピオン
「組織導入と戦略的調整」で紹介したように、チャンピオンはモバイル・プラットフォームや分析のための戦略的ビジョンを所有している組織の役員クラスの人材である。

すべての組織で上記のようなリソースを有しているわけではなく、モバイル技術や分析に精通したコンサルタントなどがチームに入っている組織もあります。 この場合、短期的にはリソースを埋めることができるものの、別途、内部的に専門知識を蓄積し、ノウハウを開発していくことも大切です。

課題#3 モバイルデータの統合と解析の難しさ

レポート作成と分析に際して、マーケターはさまざまな課題に直面します。 この調査の23%のマーケターが「モバイル計測において、すべてのデータを分析することは大変な作業だった」と回答しています。 また、13%のマーケターが「モバイルのデータが莫大で、意味のある結論に到達できなかった」と答えました。 これを鑑みると良質なモバイルレポートと解析プロセスが重要であることが言えます。 モバイル解析プログラム如何によって、モバイル解析に多くの時間を割く場合もあれば、洞察と提言のためにほんのわずかな所要時間で済む場合もあるでしょう。

分析と提言

多くのマーケターが統計的なサマリーデータの定期監視を行っていますが、これではプログラム全体の進行の監視をしているとは言えません。 定期的なレポーティングプロセスの実装は、組織から「モバイルサイトやアプリケーションはユーザーに満足されているか」などの理解を得ることができます。 定期的なサマリーデータのレポートにKPIを加えれば、モバイルの取組みをより深く洞察することが可能となります。

通常のモバイルプラットフォーム、プログラムに関するレポートには、最低限次の項目を含める必要があります。

KPI
KPIのすべてをレポートに加える。目標やベンチマークとの比較、または対前月、対昨年などの期間比較でもよい。

診断分析
KPIに、より詳細な状況を与えるのに有効。例えばモバイルコスト削減がKPIのうちの1つである場合、特定の取組みやプラットフォーム別のコスト削減に関する情報を含める。

洞察
モバイルレポートを見るほとんどの人が取組みを理解できていないため、常に最も重要なデータや調査結果にコメントをつける。

提言事項
データに基づいて、モバイル・プラットフォームや取り組みを改善するための提言事項を入れる。 たとえば、特定のモバイル検索連動型キャンペーンはとても高い来訪者獲得単価であることを発見した場合、 「当該キャンペーンの予算を削減するか、別のテストを実施してはどうか」と提言する。

課題
見つけた課題を記載する。(例)「特定のモバイル検索連動型キャンペーンについて、来訪者獲得単価が非常に高いことがわかった。」

テストと最適化

テストと最適化を繰り返すことにより、マーケターはサイト、アプリケーション、および広告について、より良い結果を得ることができます。 また、テストと最適化プロセスの実装は、ユーザビリティの高いモバイルサイトに最適化する上でも役立ちます。
今回の調査において13%のマーケターは、「モバイルサイトをテストしている」と回答しています。
テストと最適化プログラムを実装するには、プロトタイプでサイトを制作し、これに対してテストを繰り返し、最適化します。これが成功への第一歩です。

マルチチャネルダッシュボード&レポート

いわゆる「サイロ化(システムが孤立していて、どの他のシステムとも連携していない状態)」したデータは、モバイルマーケターにとって大きな課題の1つです。 非常に多くのツールを利用できる状況にあるマーケターは、さまざまなソースからのデータを読み解く必要がありますが、これらおのおののデータを連携させることはあまりありません。 また、組織がモバイルサイトとアプケーションをより多く持てば持つほど、「サイロ化」するデータが多くなる可能性があります。 これではお互いのサイトやプラットフォーム、計測ツール間で隔たりができてしまいます。

解決策として、多くの組織ではマルチチャンネルのモバイルダッシュボードを作成することで、サイロ化されたデータの課題に対応してきました。 ダッシュボードは、Excelのような単純なツールか、いくつかのサードパーティ製のツールで作成することが可能です。 これらを利用することで、すべてのモバイルデータを横並びで見ることができるようになります。

分析プラットフォーム、app store、テキストメッセージングツールやキャリアなど、さまざまなソースから引き出したデータも、 マルチチャンネル・ダッシュボードを使用することで、データの相関関係や傾向を表示できるようになり、より有意義な分析と提言をすることが可能です。

データウェアハウス

集中型データウェアハウスや、ビジネス・インテリジェンス・ツールを導入することで、 オンライン、オフラインやモバイルユーザーの間のギャップを埋めている組織もあります。 ベーシックなレベルでは、ユーザーが各プラットフォーム上で識別され、ユーザーのIDまたは名前が一致する場合、データはシステム内で相互に接続されます。 これにより、オンラインとオフラインを横断して顧客分析することができます。

この種の分析方法を活用する組織は、強力な競争上の優位性を持っています。 この戦略によって企業は自社ユーザーに関連する様々なオファーやコンテンツを用意することができ、 オンラインオフライン問わず、タッチポイントに接触したユーザーを俯瞰的に見ることができます。


参考文献

MOBILE WHITEPAPER:OVERCOMING PRIMARY OBSTACLES TO EFFECTIVE MOBILE ANALYSIS

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